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– 大地に適応しすぎた有袋類 –
ノトテリウム
かつてオーストラリア大陸には、
有袋類とは思えないほど巨大な草食動物が生きていた。
その名は ノトテリウム(Nototherium)
ディプロトドンの近縁にあたるこの生物は、
更新世のオーストラリアにおいて、
静かに、しかし確かに大地を支配していた。
だがその運命もまた、
人類との出会いによって終わりを迎える。
基本情報
| 分類 | 有袋類(双前歯目/ディプロトドン科) |
|---|---|
| 時代 | 更新世(約200万年前〜約4万年前) |
| 分布 | オーストラリア全域 |
| 体長 | 約3〜4m |
| 体重 | 最大1トン前後 |
| 食性 | 草食 |
| 特徴 | 大型で頑丈な体躯、強い前肢、低い重心 |
ノトテリウムという存在
ノトテリウムは、
オーストラリアの乾燥環境に高度に適応した草食動物だった。
- 硬い植物をすり潰す歯
- 安定した歩行を可能にする体型
- 水資源の乏しい環境への耐性
これらは、
長い進化の中で獲得された完成度の高い適応だった。
彼らは速くはない。
しかし、逃げる必要もなかった。
絶滅までの経緯
ノトテリウムが生きていた時代、
オーストラリアには彼らを恒常的に狩る捕食者はいなかった。
しかし約5万〜6万年前、
現生人類がオーストラリア大陸に到達する。
その後、
ノトテリウムを含むオーストラリアの大型有袋類は、
比較的短期間のうちに姿を消していく。
- 化石の急激な減少
- 人類到達時期との一致
- 焼畑や景観改変の痕跡
これらは、
人類の影響が決定的だった可能性を示している。
なぜ人類が決定的だったのか
ノトテリウムは、
人類を「捕食者」として認識していなかった。
- 人類を恐れる進化的記憶がない
- 繁殖速度が遅い
- 生息域が広く、しかし分断されやすい
そこに、
- 集団狩猟
- 火の使用による環境改変
という、
それまで存在しなかった圧力が加わった。
狩られなくとも、住めなくなった。
ノトテリウムの絶滅が示すもの
ノトテリウムは、
環境に適応しきった、成功した生物だった。
それでも、
環境そのものを変えてしまう存在には耐えられなかった。
この絶滅は、
人類が単なる捕食者ではなく、
「生態系の構造を変える存在」になった瞬間を示している。
大地とともに消えた巨獣
ノトテリウムは、
戦って敗れたのではない。
逃げ遅れたのでもない。
ただ、
世界の前提が変わった。
それだけで、
彼らの居場所は失われた。